薬師寺東塔-緩急のリズムと全体構成美-

奈良県
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薬師寺について

薬師寺は、平城京に遷都される以前の藤原京において創建された。3代にわたる時代(天武天皇、持統天皇、文武天皇)に行われた重要なプロジェクトであった。現在の薬師寺は、奈良市にある。遷都された際に建てられた建物で現存しているのは東塔だけであり、国宝に指定されている。もう一棟の国宝建造物は東院堂である。こちらは、建造物として着目する人は多くないようであるが、祀られている仏像を目当てに訪れる人は多い。そのほかの建物は、昭和から平成にかけて復元再建されたものであり、鮮やかな色彩や煌びやかな錺金物が目を引く。

薬師寺東塔について

東塔は、平城遷都から間もなくの天平2年(730)に建てれらたと伝わる(『扶桑略記』(平安時代)による)。建立年について、平城遷都に際して新築されたという説と、藤原京から移築してきたという説で長らく議論が行われてきたようである。しかし、平成21年から令和3年にわたる修理工事にともなう調査によって、結論が出された。すなわち、年輪年代法による部材の伐採年の判定により、平城遷都による新築であるとのことである。

何はともあれ、奈良時代の塔が現存していることが大変奇跡的である。
最大の特徴は、各層に裳階がつくという特異な構成であろう。裳階の壁は、身舎の壁よりも外側に持ち出されている。一方、屋根の大きさを比較すると、裳階の屋根は身舎の屋根よりも小さい。大小の屋根が交互に、そして少しずつ逓減しながら上へと向かっていく。各部の凸凹、緩急と全体の方向性によって、棟のシルエットが変化に富んだものとなっている。フェノロサが「凍れる音楽」と表現したのもうなずける。

私が東塔の魅力に気付いたころには、平成の大修理が始まっていた。その間、何度か薬師寺に参拝させていただく機会があったが、当然のことながら、三重塔は素屋根に覆われた状態であった。令和3年になり修理が完了し、内部の公開まで行われた。またとない機会と思い、2度拝見いたした。今後、もう内部を拝観することはできないかもしれないと思うと残念ではあるが、その分ありがたさも感じられる。2度の拝見を記憶にとどめておきたい。

東塔外観 北から
1層目 身舎(上)と裳階(下)の屋根 勾配がとても緩いため薄くて軽快に見える
三手先ながらも簡素な軒裏が垣間見える
取り外された古い水煙
社寺建築に釘が使われていないというのは誤解で、こんなにも立派な釘が奈良時代から使用されている

参考文献

加藤朝胤ほか『よみがえる白鳳の美』朝日新聞社、2021年
中川武編『日本建築みどころ事典』東京堂出版、1990年(初版)
山本忠尚『鬼瓦』日本の美術第391号、至文堂、1998年

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