法隆寺という場所について今思うこと

奈良県

東海地方でそだった筆者がはじめて法隆寺を訪れたのは小学生の修学旅行であった。

その頃は、歴史にはまったく興味はなく、法隆寺に対しても興味を持っていたという記憶はない。なんだか地味だし、世界最古の木造建築といわれてもピンとこないし。逆に、金閣寺のような、ピカピカの建物が池に移りこむというわかりやすい美しさに惹かれており、その様子を絵に描こうと何度も試みた記憶はある。

それなりの年月が経過し、建築学科のある学校でまがりなりにも建築史の分野で論文を書いて卒業したが、やはり、法隆寺の魅力に気が付くにはもう少し時間が必要であった。

大学院を修了後に普通の建築設計事務所に就職して1~2年が経過したころ、どういうわけか急激に古建築、とりわけ法隆寺への興味がわいてきた。そして、修学旅行ぶりに法隆寺を参拝してから、定期的に(1~2年に一度ほど)訪れるようになった。

まずまずの大人になって感じる法隆寺の魅力は、世界最古の木造建築があることはもちろんであるが、中世の魅力的な建築も実は豊富に残っていることが挙げられる。

法隆寺を訪れてまず西院伽藍において参拝の受付をすると、三つ折りのパンフレットをいただく。そこには、国宝と重要文化財に指定されている建造物が色分けされた境内図が示されている。無知な頃は気にも留めなかったが、国指定建造物の数の多さは圧倒的である。その多くは、中世の建造物である。法隆寺に行くと、どうしても飛鳥時代の建築に意識を持っていかれがちであるが、これだけの数の中世以前の建築が高密度に現存している場所というのは、他にはなかなかないのではないか。

中世の日本建築の特徴をあえて一般化してみると、緊張感のある屋根の反り、絶妙で美しい木割(≒部材の比例関係)、無駄がない適度な装飾などであろうか。このような、魅力を持った建築が、法隆寺にはごろごろしているのである。

拝観券によって西院伽藍、東院伽藍、宝物殿の有料ゾーンを廻るよう促されるが、その経路の途中や少し外れた場所にも見るべき建築がひしめいている。そういった建物を、毎回訪れるたびに見たくなるので、なかなか帰れないのである。

個々の建築についての記録はまたの機会に回すが、とにかく見どころが豊富である点だけは強調しておきたい。決して、金堂と五重塔だけ見て満足していてはいけないのである。と私は思う。

法隆寺は、日本という国にとっては、仏教伝来の初期のころに造営された寺院として古代の建築が多く残る貴重な場所である。

筆者にとっては、古建築のおもしろさにすこしづつ引き込んでくれた思い入れのある場所であるとともに、それぞれの時代の高いレベルの美しさを備え、かつさまざまな示唆を与えてくれる建築がひしめく場所である。

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